大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和60年(ワ)125号 判決

反訴原告

吉川忠敏

ほか三名

反訴被告

田中均

ほか一名

主文

一  被告両名は各自、

1  原告吉川忠敏に対し、金六七万一〇九六円及び内金五九万一〇九六円に対する、

2  原告曽根武に対し、金七〇万八三〇九円及び内金六二万八三〇九円に対する、

3  原告奥村時光に対し、金二九万七二七四円及び内金二五万七二七四円に対する、

4  原告宮尾清勝に対し、金四七万三三三五円及び内金四一万三三三五円に対する、

いずれも昭和六〇年一月二四日から支払ずみに至るまで年五分の割合による各金員を支払え。

二  原告らのその余の各請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの、その余を被告らの各連帯負担とする。

四  この判決は第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告ら

1  被告らは各自、

(一) 原告吉川に対し四一四万七〇九五円及び内金三七七万〇〇九五円に対する、

(二) 原告曽根に対し二三九万五七六四円及び内金二一七万八七六四円に対する、

(三) 原告奥村に対し二一四万三八一五円及び内金一九四万九八一五円に対する、

(四) 原告宮尾に対し一一三万六三三四円及び内金一〇三万三三三四円に対する、

いずれも反訴状送達の日の翌日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を各支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告ら

1  原告らの各請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  交通事故

(一) 日時 昭和五九年一月二二日午前一一時一五分頃

(二) 場所 京都市東山区宮川筋八丁目四三六番地五条大橋上

(三) 態様 原告吉川運転、その余の原告ら同乗の普通乗用自動車(京五七に二九八八)が、電車の通過待ちのため停車中、被告均運転の普通乗用自動車(京五七み九〇〇四)が追突した。

2  被告らの責任原因

(一) 被告均

本件事故は、被告均の前方不注意の過失によつて発生したのであるから、民法七〇九条の規定による責任がある。

(二) 被告茂

被告茂は、被告均運転の車両の保有者であるから、自賠法三条の規定に基づく責任がある。

3  原告らの損害

(一) 原告吉川

(1) 受傷と治療経過

頸椎捻挫、右膝打撲及び腰部挫傷の傷害を負い、本件事故の翌日である昭和五九年一月二三日から同月三〇日まで通院、同月三一日から同年七月二二日まで入院、同月二三日以降通院して治療を受けている。

(2) 損害額

(イ) 治療費(自己負担分) 一〇万二七八〇円

(ロ) 文書料 二万一〇〇〇円

(ハ) 入院雑費 一三万九二〇〇円

入院一七四日につき、一日八〇〇円の割合による一三万九二〇〇円。

(ニ) 休業損害

休業期間昭和五九年一月二三日から同年九月二〇日までの二四二日につき、一日当りの収入が一万〇六二九円であつたから二五七万二二一八円。

ほかに、水揚額一八四万円以下の場合に未支給となる協定により、昭和五九年六月一三日支給分未支給額三三万三三九七円。

したがつて、休業損害は、二九〇万五六一五円となる。

(ホ) 慰藉料

前記入通院状況に鑑み、昭和五九年九月二〇日分までの慰藉料は一八〇万円が相当である。

(ヘ) 弁護士費用 三七万七〇〇〇円

(ト) まととめ

以上損害合計額は五三四万五五九五円であるところ、自賠責保険の給付金一一九万八五〇〇円を控除すると、残損害額は四一四万七〇九五円となる。

(二) 原告曽根

(1) 受傷と治療経過

頸椎捻挫及び腰部打撲の傷害を負い、昭和五九年一月二三日以降通院して治療を受けている。

(2) 損害額

(イ) 治療費(自己負担分) 二〇四〇円

(ロ) 文書料 一万円

(ハ) 休業損害

休業期間昭和五九年一月二三日から同年七月二〇日までの一八〇日間につき、一日当りの収入が一万一二一五円であつたから二〇一万八七〇〇円

ほかに、前同協定により昭和五九年六月一三日支給未支給額三一万七〇二四円

更に、昭和五九年二月から同年七月分までの一か月一万円の班長手当分六万円

したがつて、休業損害は、二三九万五七二四円となる。

(ニ) 慰藉料

前記通院状況に鑑み、昭和五九年九月二〇日分までの慰藉料は九七万円が相当である。

(ホ) 弁護士費用 二一万七〇〇〇円

(ヘ) まとめ

以上損害合計額は三五九万四七六四円であるところ、自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は二三九万五七六四円となる。

(三) 原告奥村

(1) 受傷と治療経過

頸椎及び腰椎各捻挫の傷害を負い、本件事故の翌日である昭和五九年一月二三日から同月三一日まで通院、同年二月一日から同年三月二六日まで入院、同月二七日以降通院して治療を受けている。

(2) 損害額

(イ) 治療費(自己負担分) 五万〇〇五〇円

(ロ) 文書料 九〇〇〇円

(ハ) 入院雑費 四万四〇〇〇円

入院五五日につき一日八〇〇円の割合による

(ニ) 休業損害

休業期間昭和五九年一月二三日から同年七月二〇日までの一八〇日につき、一日当りの収入が八四五一円であつたから一五二万一一八〇円

ほかに、前記協定により昭和五九年六月一三日支給分未支給額二三万四五八五円

したがつて、休業損害は、一七五万五七六五円となる。

(ホ) 慰藉料

前記入・通院状況に鑑み、昭和五九年九月二〇日分までの慰藉料は一二九万円が相当である。

(ヘ) 弁護士費用 一九万四〇〇〇円

(ト) まとめ

以上損害合計額は三三四万二八一五円であつたところ、自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は二一四万三八一五円となる。

(四) 原告宮尾

(1) 受傷と治療経過

頸椎捻挫の傷害を負い、昭和五九年一月二三日以降通院して治療を受けている。

(2) 損害額

(イ) 文書料 一万円

(ロ) 休業損害

休業期間昭和五九年一月二三日から同年四月二〇日までの八九日につき、一日当りの収入が一万〇七八九円であつたから九六万〇二二一円

ほかに、前記協定により昭和五九年六月一三日支給分未支給額二九万二一一三円

したがつて、休業損害は、一二五万二三三四円となる。

(ハ) 慰藉料

前記通院状況に鑑み、昭和五九年九月二〇日分までの慰藉料は九七万円が相当である。

(ニ) 弁護士費用 一〇万三〇〇〇円

(ホ) まとめ

以上損害合計額は二三三万五三三四円であるところ、自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は一一三万六三三四円となる。

4  結論

以上の次第であるから、原告らは被告両名に対し、請求の趣旨どおり(但し、年五分は民法所定)の判決を求める。

二  答弁

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3のうち、原告らの受傷と治療経過の事実は知らず、各損害額の原因事実は否認する。

殊に、本件事故は、車両の損傷が極めて軽微であることからしても、原告らが入通院しなければならないような受傷をしたとは、到底考えられない。現に、原告らと共に原告車に同乗していた三名については、各三〇万円の解決金をもつて早期に解決しているのであり、事故が軽微であつたことを裏付けるに足るものである。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1の交通事故及び同2の被告らの責任原因事実は、当事者間に争がない。

すると、被告らは各自、原告らが本件事故により被つた損害(但し、被告茂については人的損害に限定)を賠償する責任がある。

二  そこで、いずれも成立に争いのない乙第四ないし第七号証、同第二五ないし第二七号証、同第三三ないし第三六号証、同第四三ないし第四五号証、同第六〇ないし第六三号証、同第六九ないし第七四号証によると、原告らは、本件事故の翌日である昭和五九年一月二三日、河端病院において診察を受けたのであるが、

1  原告吉川は、頸部捻挫、右膝打撲及び腰部挫傷の病名により、同月三〇日までの間に四日通院、同月三一日から同年七月二二日まで一七四日入院、同月二三日以降通院して治療を継続しているのであるが、同年一二月一五日までの通院日数は一一一日あること、

2  原告曽根は、頸椎捻挫及び腰部打撲の病名により、昭和六〇年三月二八日までの間に二六四日通院して治療を受け、同年四月三日に症状固定に達したと診断され、自賠法施行令別表の後遺障害等級一四級一〇号と認定されたこと、

3  原告奥村は、頸椎及び腰椎各捻挫の病名により、同月三一日までの間に七日通院、同年二月一日から同年三月二六日まで五五日入院、同月二七日から翌六〇年四月五日までの間に二一八日通院して治療を受け、同年四月三日に症状固定に達したと診断され、前同後遺障害等級の認定を受けたこと、

4  原告宮尾は、頸椎捻挫の病名により翌六〇年三月三〇日までの間に一二七日通院して治療を受け、同年四月三日に症状固定に達したと診断され、前同後遺障害等級の認定を受けたこと、

以上の事実を認めることができ、この認定を動かすに足る証拠はない。

三  ところが、被告らは、原告らが本件事故により右認定のような入・通院を要するほどの受傷をしたとは考えられないと主張するので、更に検討する。

1  いずれも成立に争いのない乙第五〇号証、同第五八号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める甲第四号証に、原告吉川本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く)によると、本件事故は、原告車と一メートル位の車間距離を保つて停止していた被告車が、時速五キロメートル前後で原告車に追突したものであり、原告車の衝突部位である後部バンパ後面左側部に僅かに緩やかな凹みと、同バンパ上面にふくらみがみられるものの、ウレタン製で内部に補強鉄板材が入れてある被告車の前部バンパは、或る程度の衝突現象では復元して変形が残らないところ、本件事故ではその変形が残つていないこと、本件事故により原告車の床が受ける衝撃度は、急制動時の最大減速度くらいであり、ヘツドレストレイントが設けられていない席でも(原告吉川の運転席にはその設備があつた)、頭部後傾角は六〇度より相当小さく、一般に頸部損傷は生じないとされていること、まして、腰部加速度は頭部のそれより小さく、損傷も生じ難いことが認められ、この認定に反する原告吉川本人の供述部分は措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

2  そして、前掲乙第六九ないし第七一号証、いずれも成立に争のない甲第五ないし第七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第八号証に、当裁判所の河端病院に調査嘱託の結果を総合すると、河端病院の医師は、本件事故の翌日である昭和五九年一月二三日、原告吉川及び同奥村の病名を頸椎捻挫、原告曽根の病名を頸椎捻挫及び腰部打撲とし、いずれも全治約五日間を要する見込と診察したこと、しかるに、前認定の如く原告宮尾を含めて原告らに対し、長期に亘る治療が行われているのであるが、その点について同病院の医師は、昭和六〇年六月現在までの他覚的所見として次の点を指摘する。

(一)  原告吉川

頸部につき、第四ないし第六頸髄神経の圧痛著明、右斜角筋硬直、右二、三指の知覚低下、右握力の低下著明、レントゲン線上頸椎の不撓性著名で一六、第七椎間孔狭少化、頸椎の運動機能障害、腰部につき、第三、第四腰髄神経及び腰筋膜の圧痛著明、ラセグ氏症候両側陽性、左下腿外側の知覚低下、レントゲン線上腰椎の不撓性著明、腰椎の運動機能制限があつて歩行困難のため入院の必要があつた。完全就労できる状態ではなく、この状態が何時まで続くか不明。治癒及び症状固定の見込時期も不明であり、いずれにしても後遺症を残す。殊に、右根性坐骨神経痛は相当長期間続き、治療が必要である。

(二)  原告曽根

頸部につき、第四ないし第六頸腿神経の圧痛、右斜角筋硬直、右手指の知覚低下、右握力の低下著明、レントゲン線上頸椎の不撓性著明で棒状、頸椎の運動機能制限、腰部につき、第三、第四腰髄神経及び腰筋膜の圧痛著明、ラセグ氏症候両側陽性、レントゲン線上腰椎の不撓性、腰椎運動角度の制限があつて、就労が相当程度障害されている。症状は固定しているが、通院対症治療が必要で、後遺症を残す。

(三)  原告奥村

頸部につき、第四頸髄神経根の圧痛、握力の全般的低下、レントゲン線上頸椎の不撓性、第四、第五椎間隙多少狭少化、骨棘形成、頸の左傾により左肩甲から左上肢の放散痛、頸椎の運動機能障害、腰部につき、両側腰筋膜の圧痛著明、ラセグ氏症候陽性、右大腿外側の知覚低下、レントゲン線上腰椎の不撓性、腰椎運動角度の制限があり、以前と同じ勤務は当分無理。余後は原告曽根と同じ。

(四)  原告宮尾

頸部につき、右大後頭神経及び第四頸髄神経根部の圧痛、右握力の低下、レントゲン線上頸椎の不撓性、頸椎の運動角度制限があり、タクシー乗務上支障あり。余後は原告曽根と同じ。

しかしながら、原告吉川及び同宮尾についてであるが、医師の指摘する他覚的所見が客観性あるものとして、必ずしも正鵠を得た評価と解し難いうえ、該諸症状と本件事故との関連も必ずしも明らかと言い難いこと、以上の事実を認めることができ、この認定を動かすに足る証拠はない。

そうだとすれば、原告曽根及び同奥村の前認定の所見についても、所見の類似性の故に右と同様の批判が許されないというべきである。

3  次に、原告ら各本人尋問の結果によると、原告吉川は昭和五九年九月二一日から、同曽根と同奥村は同年七月二一日から、同宮尾はもつと早く同年四月二一日から、それぞれタクシー運転手として稼働していること、原告吉川は、以前に一〇回位事故に遭遇していること、同奥村は、昭和四三年に追突事故に遭い二週間位入院したこと、以上の事実が認められ、この認定を動かすに足る証拠はない。

4  ところで、いずれも成立に争いのない甲第一ないし第三号証に、証人西田厳の証言並びに弁論の全趣旨によると、本件事故時には、原告車に原告らのほか、西田厳、村山茂及び本田信吉が同乗していたところ、同人らは、該事故から一か月も経過していない昭和五九年二月一五日、被告らの代理人との間で、解決金三〇万円をもつて示談解決していること、西田は、本件事故の約二年前にも追突事故に遭つているところ、その時の衝撃は本件のそれより強かつたけれども、鞭ち打ち症として一週間ほど休んだだけで、入院もしていないこと、以上の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

以上の諸事情を総合して考察すると、本件事故によつて原告らが受けた衝撃は、それほど強いものではなく、未だ他覚的所見を伴うような傷害を負つたとは認めるに足りず、せいぜい他覚的所見を伴わない鞭打ち症を負つたものと解するのが相当であり、この見地からすると原告らの主訴も心因的なものとにとどまるというべきである。そうだとすれば、右認定の事情に鑑みても、もとより原告らにつき入院の必要性を肯認できず、最大限昭和五九年四月末日までの休養をもつて十分というべく、これに個人差を盛るべき特段の事情は認められない。

ただ、原告吉川の主訴は深刻であるが、前認定のように同原告は、態様と程度が明らかでないまでも、過去に一〇回交通事故に遭遇しているのであるから、本件事故以前に病的素因が存したと推認して誤りなく、それに前掲甲第八号証によると、昭和五九年三月三日に転倒して右膝関節部を打撲したことが認められることに鑑み、これらが相いまつて強く頑固な主訴を招来したと解すべきであるけれども、本件事故との相当因果関係は未だ認めるに足りないというべきである。

四  よつて、右の見地から原告ら主張の損害について吟味する。

1  原告吉川

(一)  治療費(自己負担分)

いずれも成立に争のない乙第一一号証の一ないし三、同第一二ないし第一六号証の各一、二によると、昭和五九年四月末日までの治療費の自己負担分として五万〇七三〇円を要したこと、そのうち入院を前提とするものが二万七三〇〇円であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

したがつて、損害として是認されるのは、二万三四三〇円である。

(二)  文書料

いずれも成立に争のない乙第二四号証の一ないし四によると、文書料として昭和五九年六月二二日までの間に二万一〇〇〇円を要したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

診断書等の必要性は、要治療期間と必ずしも関係がないから、右の全部を損害と認めるべきである。

(三)  入院雑費

前叙のとおり入院の必要性を認め難いのであるから、その必要性を前提とする損害は認められない。

(四)  休業損害

いずれも成立に争のない乙第三号証、同第八ないし第一〇号証に、原告吉川本人尋問の結果を総合すると、原告吉川は、本件事故当時、昭和交通株式会社にタクシー運転手として勤務していたところ、同事故後昭和五九年九月二〇日まで休業したこと、事故前三か月の平均日収は一万〇六二九円であつたこと、水揚額不足のため右会社の賞与体系により昭和五九年六月一三日に支給されなかつた賞与額が三三万三三九七円であつたことが認められ、この認定に反る証拠はない。

しかし、前叙のとおり、休業を認めるべき期間は、昭和五九年四月末日までの九九日であるから、休業損害は、合計一三八万五六六八円である。

(五)  慰藉料

さきの説示に鑑み、慰藉料額は三六万円をもつて相当と認める。

(六)  まとめ

以上損害合計額は一七九万〇〇九八円であるところ、自認する自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は五九万一〇九六円となる。

(七)  弁護士費用

本訴の提起追行を弁護士に委任していることは、当事者間に争いがないところ、要した費用のうち八万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

2  原告曽根

(一)  治療費(自己負担分)

昭和五九年四月末日までに治療費の自己負担分が生じた事実を認めるに足る証拠はない。

(二)  文書料

成立に争のない乙第三二号証の一ないし四によると、文書料として昭和五九年六月八日までの間に一万円を要したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

そこで、原告吉川の関係項と同旨により、右の全部を損害と認めるべきである。

(三)  休業損害

前掲乙第三号証、成立に争のない乙第二八ないし第三〇号証に、原告曽根本人尋問の結果を総合すると、原告曽根も、本件事故当時、昭和交通株式会社にタクシー運転手として勤務していたところ、同事故後昭和五九年七月二〇日まで休業したこと、事故前三か月の平均日収は一万一二一五円であつたこと、前同旨により昭和五九年六月一三日に支給されなかつた賞与額が三一万七〇二四円であつたこと、ほかに一か月一万円の班長手当を得ていたところ、休業中それが得られなかつたこと、以上の事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

そこで、休業を認めるべき九九日間の休業損害を算定すると、一四五万七三〇九円である。

(四)  慰藉料

さきの説示に鑑み、慰藉料額は三六万円をもつて相当と認める。

(五)  まとめ

以上損害合計額は一八二万七三〇九円であるところ、自認する自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は六二万八三〇九円となる。

(六)  弁護士費用

前同旨により、要した費用のうち八万円の限度で損害と認める。

3  原告奥村

(一)  治療費(自己負担分)

前掲乙第一一号証の一、二、同第一二ないし第二二号証の各一、いずれも成立に争のない乙第四〇号証の一ないし四、同第四一号証の一ないし二二によると、昭和五九年四月末日までの治療費の自己負担分として三万二五四〇円を要したこと、そのうち入院を前提とするのが一万六五〇〇円であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

したがつて、損害として是認されるのは一万六〇四〇円である。

(二)  文書料

成立に争のない乙第四二号証の一ないし三によると、文書料として昭和五九年六月八日までの間に九〇〇〇円を要したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

そこで、原告吉川の関係項と同旨により、右の全部を損害と認めるべきである。

(三)  入院雑費

前叙のとおり入院の必要性を認め難いのであるから、その必要性を前提とする損害は認められない。

(四)  休業損害

前掲乙第三号証、成立に争のない乙第三七ないし第三九号証に、原告奥村本人尋問の結果を総合すると、原告奥村も本件事故当時、昭和交通株式会社にタクシー運転手として勤務していたところ、同事故後昭和五九年七月二〇日まで休業したこと、事故前三か月の平均日収は八四五一円であつたこと、前同旨により昭和五九年六月一三日に支給されなかつた賞与が二三万四五八五円であつたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

そこで、休業を認めるべき九九日間の休業損害を算定すると、一〇七万一二三四円である。

(五)  慰藉料

前同旨により、慰藉料額は三六万円をもつて相当と認める。

(六)  まとめ

以上損害合計額は一四五万六二七四円であるところ、自認する自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は二五万七二七四円となる。

(七)  弁護士費用

前同旨により要した費用のうち四万円の限度で損害と認める。

4  原告宮尾

(一)  文書料

成立に争のない乙第四九号証の一ないし四によると、文書料として昭和五九年六月八日までの間に一万円を要したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

そこで、原告吉川の関係項と同旨により、右の全部を損害と認めるべきである。

(二)  休業損害

前掲乙第三号証、成立に争のない乙第四六ないし第四八号証に、原告宮尾本人尋問の結果を総合すると、原告宮尾も本件事故当時、昭和交通株式会社にタクシー運転手として勤務していたところ、同事故後昭和五九年四月二〇日までの八九日間休業したこと、事故前三か月の平均日収は一万〇七八九円であつたこと、前同旨により昭和五九年六月一三日に支給されなかつた賞与額が二九万二一一三円であつたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

したがつて、休業損害は一二五万二三三五円となる。

(三)  慰藉料

前同旨により慰藉料額は三五万円をもつて相当と認める。

(四)  まとめ

以上損害合計額は一六一万二三三五円であるところ、自認する自賠責保険の給付金一一九万九〇〇〇円を控除すると、残損害額は四一万三三三五円となる。

(五)  弁護士費用

前同旨により、要した費用のうち六万円の限度で損害と認める。

五  以上の次第であるから、被告両名は各自、

1  原告吉川に対し、損害金六七万一〇九六円及び内金五九万一〇九六円に対する、

2  原告曽根に対し、損害金七〇万八三〇九円及び内金六二万八三〇九円に対する、

3  原告奥村に対し、損害金二九万七二七四円及び内金二五万七二七四円に対する、

4  原告宮尾に対し、損害金四七万三三三五円及び内金四一万三三三五円に対する、

いずれも反訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和六〇年一月二四日から支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払義務を負担しているというべく、原告らの各請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却する。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項但書、仮執行宣言につき同法一九六条を、各適用のうえ、主文のとおり判決する。

(裁判官 石田眞)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例